こんにちは、長島です。
今回は『トルクレンチ』を紹介します。
ボルトやナットを一定の力(トルク)で、締め付ける事ができる便利な工具です。
工具を選ぶ時の参考にしてくださいね。
トルクレンチとは
ボルトやナットを一定の力(トルク)で、締め付ける為の工具です。
振動や衝撃に弱い精密な測定機器です。
手工具のような気がしますが、ボルトやナットの締め付け値を測定できるので、計測機器に分類されています。
持ち手(柄)の根元で、トルクを設定できるようになっていて、設定したトルク以上に、締めつけられない構造になっています。
よく見かけるのは、車屋さんでタイヤ交換をした時に、タイヤの締め付けをチェックする時に使われていると思います。
締め付けが緩い場合はネジが緩んだり、締め付け過ぎるとネジを折ったりする事が考えられます。
締め付け具合を一定にする役割に、トルクレンチが使用されていますよ。
トルクレンチの種類
■ メーカー
・ ASAHI TOOLS(旭金属工業株式会社)
・ KTC(京都機械工具株式会社)
・ TONE(TONE株式会社)
■ トルクレンチの種類
機械式とデジタル式の2種類があります。
▪ 機械式
スプリング等の機械的な機能でトルクの値を測定します。
・ プレセット型
あらかじめ設定したトルク値に達すると作業者に知らせるタイプ。
一定のトルクに到達したら、カチッと音がなります。
数値を読み取る必要がないので、手返しよく作業できるタイプです。
・ ダイヤル型やビーム型
トルク値が表示され、作業者が数値を読みながら作業を行うタイプ。
プレセット型とは違い、カチッと音がなりません。
トルクの検査に向いているタイプです。
・ 固定型
トルク調整できないタイプ。
購入する時に設定してもらい出荷してもらいます。
工場等で、一定のトルクしか必要のない場合はオススメです。
▪ デジタル式
センサーで電気的な信号に変換してトルクの値を測定します。
設定したトルクに到達すると、音と光で教えてくれます。
左右両方向で使用でき、種類が豊富です。
トルクの検査にも使用できます。
■ 先端の種類
・ モンキタイプ
・ ドライバタイプ
・ ヘッド交換タイプ
▪ ヘッド交換タイプ
・ スパナ
・ めがねレンチ
・ ソケット
・ 六角棒レンチ
・ 引掛スパナ
上記、5種類があります。
ヘッド交換式は先端が交換式になっているので、使いたいタイプを使用する事ができます。
■ スパナ
・ 8mm~41mm
片口スパナタイプです。
サイズは細かく分かれています。
■ めがねレンチ
・ 8mm~41mm
めがねレンチタイプです。
スパナタイプと同様に、サイズが細かく分かれています。
スパナタイプより締め付けしやすいと思いますよ。
■ ソケットレンチ
・ 8mm~32mm
トルクレンチの先端は、9.5mmか12.7mmが多いです。
そのサイズにあるソケットレンチを持っている方は、別途購入する必要はありません。
トルクレンチにも代用できます。
■ 六角棒レンチ
・ 4mm~14mm
手工具の六角棒レンチは、1.5mm~10mmが多いです。
しかし、トルクレンチ用の六角棒レンチは、最大で14mmもあります。
セット品もありますが、トルクレンチ用の六角棒レンチは、ソケットレンチよりも使用頻度が少ないと思います。
必要なサイズを単品で購入する方が良いと考えます。
■ 引掛スパナ
・ 32mm~100mm
他のタイプよりも、使用頻度は少ないと思っています。
必要に応じて検討してみてはいかがでしょうか。
■ モンキタイプ
・ 10mm~36mm
モンキレンチタイプのトルクレンチです。
配管を締め付ける場合に便利だと思います。
しかし、モンキレンチと同様に長く使っていると、あそびが大きくなる可能性もあります。
スパナタイプだとあそびが発生しないので、スパナタイプにするかモンキレンチタイプにするか、よく検討されてくださいね。
■ ドライバタイプ
ドライバタイプのトルクレンチです。
先端はビット交換式になっています。
ビット交換式なので、先端が折れたり欠けたりしても交換できるので経済的です。
ドライバタイプを使用場所は少ないと思います。
校正
トルクレンチは計測工具です。
ボルトやナットを締め付けるので、手工具と勘違いされがちですね。
実際私も手工具だと思っていました。
このブログを通じて、トルクレンチについて調べていると、計測工具だと知りビックリしています。
私を同じように勘違いされている方も多いと思います。
計測工具は、校正作業が必要です。
■ 校正とは
校正作業は、トルクレンチテスタでトルクレンチの精度を点検、確認する作業です。もしトルクが狂っていた場合、修理や調整をして測定精度を回復させる必要があります。
私はトルクレンチテスタを見た事も使った事もありません。
私のような方は、自分でやらない方が良いと思います。
購入した販売店に頼んで、メーカーに依頼するようにしましょうね!
トルクレンチは精密機器で高価な機器です。
大切に使いましょう!
なぜトルクレンチが必要なのか
■ トルクレンチが必要な理由
① 締め付けが弱くて、ナットが緩んでしまう。
② 締め付け過ぎて、ボルトが破損(折れる)してしまう。
上記、2パターンが考えられます。
① 締め付けが弱くて、ナットが緩んでしまう場合
人がボルトを締め込んだ場合、同一の力(トルク)で締め込むのは不可能です。
例えば
Aさん ー 身長が160cm、体重が55kgだったとします。
それに対して
Bさん - 身長が180cm、体重が80kgだったとします。
各々に普段通りボルトを締めてもらったとしたら、強く締め付けできるのはどっちでしょうか?
Bさんが強く締め付けできると想像できると思います。
2人とも、同じ力で締め付ける事は不可能ですよね。
Aさんがナットを締め付けると、緩んでしまう可能性があります。
Bさんがナットを締め付けると、締め過ぎてしまう可能性があります。
② 締め付け過ぎて、固定しているボルトが破損してしまう。
ボルトを締め付ける場合、どのくらいの力で締め付けていいのかわかりませんよね。
ボルトにはある一定の場所(降伏点)を越えると、ボルトが伸びたまま戻らなく場所があります。
▪ 降伏点とは
弾性域と塑性域の中間点です。
ボルトは見た目では分かりませんが、伸び縮みしています。
弾性域はボルトを緩めると元に戻る範囲の事で、塑性域はボルトを緩めても元に戻らなくなる範囲の事です。
降伏点を越えるとボルトが戻らなくなり、更にそれを越えて締め付けると破断点を超え、破断(折れる)してしまいます。
私もボルトを締め付ける場合、どのくらいの力で締め付けていいのかわかりません。
10mmの六角ボルトとナットを締め付ける場合、手締めだと折れる事はほとんどありませんが、固定されたボルトにナットを締め付ける時に、長めのめがねレンチを両手で締め付けると、簡単に折れてしまします。
12mmだと少し堅いですが、折れます。
16mmだと手では折れませんが、足で踏むと折れます。
折れるまで締め付ける事は滅多にありませんが、改修工事等でナットを外したい場合は、壊れる覚悟で外します。
ナットがサビている場合は、16mmのボルトでも折れてしまう事もありますよ。
■ 結論
同じ締め付けをしてくれのは、トルクレンチだけです。
使い方を間違えなければ、トルクレンチを使用すると10人が10人とも、同じ力(トルク)で締め付けできます。
トルクレンチの使い方は簡単で、通常通り締め付けるだけです。
ただ、締め付けた場合に、機械式のトルクレンチだと、『カッチ』と音がした場所で、規定の締め付けができた合図になります。
このトルクレンチを頻繁に使用されているのは車屋さんだと思います。
それはなぜでしょう?
タイヤの増し締めにトルクレンチを使用しているからです。
トルクレンチで締め込む事で、適度なトルクで締めこむようにしています。
車のタイヤは一定基準のトルクで締めるように設定されています。
締め付けが緩いと、ボルト緩んでタイヤが外れます。
逆に締め過ぎると、ボルトが折れてタイヤが外れます。
タイヤが外れないようにするには、タイヤを固定しているボルトを適度なトルクで締める必要があります。
強からず弱からずって感じでしょうか。
なんでもそうですが、強く締めればいいってものではありません。
適度なトルクで締め込む事で、ボルトが長持ちするのです。
人の手で締め込んでも、12mmくらいまでのボルトなら締め込んで折る事は可能です。
16mm以上のものは、そうそうは折れませんが、電動工具を使用すると折れるかも知れませんね。
重要な場所でボルトを締め込む時にはトルクレンチは必要だと思います。
トルクレンチのメリット・デメリット
機械式のプレセット型とデジタル式を比べてみました。
■ 機械式プレセット型
▪ メリット
・ 締め付けの確認が簡単
設定したトルク以上になると、カッチと音がなるので、分かりやすいトルクレンチです。
・ トルクの調整が簡単
持ち手の先端部分を回転させるだけで調整が可能です。
▪ デメリット
・ スプリングを緩めないと故障の原因になる。
プレセット型は内部にスプリングが入っています。
そのスプリングの強さを調整してトルクを一定にしていますが、そのスプリングが引っ張ったままにしておくとトルクの調整ができなくなる可能性があります。使い終わったら、毎回スプリングを緩める事が必要になります。
■ デジタル式
▪ メリット
・ 左右両方向で使用できる。
締め付け確認が左右両方向で可能です。
・ トルクの間違いが少ない。
デジタルで表示するので、間違いが少ないと思います。
・ 検査にも使用できる。
プレセット型とは違い、検査作業にも使用できます。
▪ デメリット
・ 設定が面倒。
デジタルタイプなので設定が面倒です。
慣れるまで時間がかかるかも知れませんね。
機械式のプレセット型とデジタル式の価格は同じくらいです。
使用する場所に応じて、お好みで選んでいいと思いますよ。
トルクレンチの使い方
■ デジラチェの場合
測定シーンに合わせて、選べる3モード~
① 計測モード
目標トルクを設定せず、目視により締め付け状況を確認しながら作業できるモード。
② プレセットモード
あらかじめ目標トルクを設定し、作業ができるモード。(最大5件)
③ 合否判定モード
あらかじめ設定したトルク範囲で作業できたか確認するモード。正確に作業できた回数を履歴として残すことができます。
■ 使い方
プレセットモードの場合
① 電源を入れる
Pボタンを押して電源を入れます。
② メモリーナンバー選択
Mボタンを押してメモリーナンバー(設定トルクを記録させる番号。5つまで登録可能)を選びます。
③ 目標トルク設定
「+/C」ボタンと「―」ボタンで目標トルク値を設定します。
④ 目標トルク登録
Mボタンの長押しでトルク値を登録します。
⑤ 測定作業
締め付け作業を行います。
設定トルクの90%に達するとブザーがピッピッ…と鳴り出しLEDが点滅。
100%でブザー音がピーと変わりLEDが点灯します。
■ 持ち方
適正トルクで使用するため、正しい力点(通常はグリップの中央)を持って使用すること!
トルクは回転の中心軸から力をかける点(力点)までの距離(有効長)と、かける力の大きさで決まります。
回転軸から力点までの距離が変わると正確なトルク測定はできないので、トルクレンチを使用する際は、トルクレンチの力点(通常はグリップの中央)に力をかけながら回さなければいけません。
■ クローフットレンチ使用時のトルク設定について
クローフットタイプのレンチを使用すると、回転軸から力点までの距離が変わるため、トルクレンチの測定値=実際のトルク値となりません。目標トルク値で締め付けるには、トルクレンチの入力値を目標トルク値から変更する必要があります。
例(有効長150mmのトルクレンチで10N・mで対象物を締め付ける場合)
A(有効長):150mm
B(口径部からドライブ中心までの距離):30mm
必要なトルク値:10N・m
トルク換算式:150÷(150+30)×10≒8.3
トルクレンチを8.3N・mに設定すると10N・mで締め付けられます。
※寸法図にあるB寸法の数値(30mm)はトルクレンチの中心軸延長線上にクローフットレンチの中心軸があるときのものです。
右図のようにクローフットレンチの中心軸がトルクレンチの中心軸延長線上にない場合は、B寸法を実測して換算式にあてはめてください。
トルクの単位は、ニュートンメートル
以前は、kgf・m(キログラム重・メートル)が用いられていたトルクの単位ですが、新計量法により現在ではN・m(ニュートン・メートル)が使われています。
私のオススメ工具
■ 機械式 本体のみ
■ デジタル式 本体のみ
まとめ
今回はトルクレンチを紹介しました。
手回しだと、一定の強さで締める事ができませんよね。
必ず強い部分や弱い部分ができます。
規定の強さで締める締め付ける時にはトルクレンチしかありません。
とても便利な測定工具だと思いますので、検討されてはいかがでしょうか。
注意する事
トルクレンチは一定の方向のみ、トルクの調整ができるようになっています。
反対側で締め付けると、トルクが効かないので注意してください。
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